森正史先生のご逝去を悼んで

2017/01/18

元愛媛民俗学会会長森正史(もり・まさふみ)氏

元愛媛民俗学会会長
森 正史
(もり・まさふみ)氏

愛媛の民俗学の基礎を築き、地域文化の解明や保護・継承に尽力した元愛媛民俗学会会長の森正史(もり・まさふみ)氏が16日午前6時8分、心不全のため東温市の特別養護老人ホームで死去した。93歳。松前町出身。
(1月18日 愛媛新聞より)

 平成29年1月16日、愛媛の民俗学を長年支えて来られた森正史先生がお亡くなりになり、1月19日に葬儀に参列してきました。先生の経歴や実績等についてはすでに1月22日の愛媛新聞に大本敬久氏の追悼文「森正史先生を悼む」が掲載されていますのでそちらに譲りたいと思います。

 私個人としては学生の頃から四国民俗学会、愛媛民俗学会などでお世話になり、そしてその著作にずっとお世話になってきました。私の手元にある先生の著作(共著も含む)を見てみると『山と信仰 石鎚山』『松山の民俗』『山岳宗教史研究叢書12大山・石鎚と西国修験道』『江戸時代人づくり風土記38』『中島町誌』『随想録 愚者の一樹』と、ざっと探しただけで6冊、これ以外にも愛媛県史の民俗編、学問宗教編があります。かつて伊予の修験道をテーマとして修士論文を書き進める上で特にお世話になったのが『山と信仰 石鎚山』でした。この本のはじめにの部分で次のように書かれています。
「さて男子たるものの一度は試みるべき山、聖なる霊山と仰がれてきた石鎚山をどう人びとに紹介すればよいのか、正直いってそれは容易なことではない。裾野は広いし、高く、そして奥の深い石鎚山は、大きすぎて私には手が出せないまま今日に至っている。このたびはからずも「山と信仰」というシリーズの一冊として本書を書くことになったが、書きながら私はいまも迷妄の世界を彷徨している有様である。」

先生の著作(共著も含む)6冊

 これは長年愛媛の民俗学をリードし、愛媛に関する民俗のありとあらゆることを引き受けて来られた先生ゆえの苦悩と石鎚信仰の奥深さを正直に書かれたものではなかったかと思います。迷妄の世界を彷徨していると書かれていますが、そこはさすがに愛媛とその周辺地域をしっかりと調査して歩んで来られた成果をもとに、石鎚信仰と庶民の暮らしとの関わりを中心にしっかりと書かれています。私個人としては先生があまり触れて来られなかった石鎚山と中央の修験組織当山派本山派との関わりをより明らかにすることを課題により一層石鎚信仰を明らかにしていきたいと思います。

また、昭和27年に先生が当時の仲間たちと設立した愛媛民俗学会ですが、途中の中断の時期を経て平成15年に復活し、16年には会誌『伊予路―民俗と歴史―』が42年ぶりに発行されました。このときの巻頭を飾った「『愛媛民俗学会』の復活に寄せて」のなかで「『復活おめでとう』と何返も言わしてもろて祝辞としたい。」とくだけた無邪気な文章で喜びを表現して下さいました。しかし、残念ながらその学会はまたも中断してしまっている状態です。SNS等の発達で会員同士の連絡や案内が容易になっていますので、先生の遺志に応える意味でもできるだけ早く「愛媛民俗学会」をまた復活できればと思います。

御霊のご平安をお祈りすると共に、少しでも多くの人が愛媛の民俗に関わる機会を作り、先生の後の愛媛民俗学を繋いでいきたいと思います。

合掌。

平成29年2月4日
地方文化研究所代表 竹島 大祐

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